江戸の美は「モノより手間」

髪型、メイク、ファッションなど「美しさの基準」は時代と共に変わっていくものです。

そこで、いわゆる文明開化の前、純和風の最後の時代、江戸の美の基準はどうだったかと言いますと、今と考え方が大きく違います。

工場も宅配便もない時代ですから、モノが圧倒的に少ない。

その代わりに今よりも暇だったので、手間をかけることが重要だと考えられていました。

服もアクセサリーも少ないから、髪型やメイク、着付けにエネルギーを注ぐのです。

例えば、女性の髪型。

長い髪をびんつけ油で固めて、結っていくわけですが、1人ではできず、結髪師というセット専門の美容師さんもたくさんいました。

結うのが大変すぎるので、女性の洗髪は月1から2回ほど。

髪をかくための櫛が有り、寝る時も高い枕を使い髪が畳に付かないようにするので、寝返りも打てません。

男性も、いわゆる「ちょんまげ」は、前頭部を剃る必要があるため、ひげ剃りと合わせると、毎朝大変です。

着物も着付けに時間がかかるわけですから、身支度に相当な手間と時間をかけていました。

おしろいも、粉を水で溶いてから刷毛(ハケ)で塗り、終わればその刷毛を洗うという手順が必要です。

夜のスキンケアは糠袋と言われる、ヌカを詰めた木綿の袋で、なでるように洗うだけの人が、ほとんどだったそうで、その点は時間がかからず、当社のオンリーワンクレンジングの方法に近いと思います。

今はどちらかと言うと、着るのがカンタンな洋服とアクセサリーをたくさん持ち、メイクも短い時間で!が人気ですよね。

僕も独身時代は買い物が好きで、服や靴などをたくさん買っていたのですが、子育て中の現在は、江戸時代までとはいきませんが、グルーミングに時間をかけるようになりました。

買い物に行く時間が無いというのも大きな原因ですが。

腕時計よりも爪切り、服よりも髪型、香水よりも歯みがきに、以前よりも力を入れています。

人の見た目の記憶って服やアクセサリーよりも、そのような手間の部分の方が残っているのでは?と感じるのです。

 

写真引用元

上/葉うた虎之巻 / 豊原国周 / 文久(1861~64)頃

下/江戸名所百人美女 今川はし / 三代 歌川豊国、コマ絵 歌川国久 安政5年(1858)

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